労務・制度

法定福利費を見積書に入れる方法|内訳の書き方と元請への出し方

公開:2026年10月23日更新:2026年10月24日

この記事の結論

  • 法定福利費は、労務費とは別の行に書く
  • 令和7年12月から、内訳を書いた見積書の作成は努力義務
  • 数字はツールで出し、標準見積書の欄に移す

公式情報の確認日:2026年10月23日

目次(8項目)
  1. この記事で分かること
  2. なぜ別の行で書くのか
  3. 見積書のどこに書くか
  4. 書き方の手順(5ステップ)
  5. 元請への出し方と、削られたときの対応
  6. よくある間違い
  7. よくある質問
  8. まとめ

「元請から、法定福利費を見積書に別で書いてほしいと言われた」「書きたいが、どこに何を書けばいいのか分からない」。社会保険を払っている会社ほど、この悩みに当たります。

結論から言うと、法定福利費は「労務費とは別の行」に、「内訳が分かる形」で書きます。法定福利費の計算そのものは法定福利費 計算ツールで出せます。この記事では、出した数字を見積書のどこにどう書くか、元請にどう出すか、削られそうなときにどうするかに絞って説明します。

記事中の法令・資料は、特に書いていない限り2026年10月23日に国土交通省などの公式サイトで確認したものです。

この記事で分かること

  • 法定福利費を、なぜ見積書に別の行で書くのか
  • 見積書のどこに、何を書くか
  • 書く手順(5ステップ)と、数字の例
  • 元請への出し方と、削られたときの相談先

なぜ別の行で書くのか

法定福利費とは、法令にもとづいて会社が負担する社会保険料(事業主負担分)です。見積書で内訳として示すのは、原則として健康保険料(介護保険料を含む)・厚生年金保険料(子ども・子育て拠出金を含む)・雇用保険料のうち、現場の作業員の分の事業主負担分です。労災保険は元請が一括して加入するため、原則として含めません(国土交通省「法定福利費を内訳明示した見積書の作成手順」、国土交通省「『法定福利費を内訳明示した見積書』作成手順」、いずれも2026年10月24日確認)。

工事の見積を「一式いくら」で出すと、法定福利費が請負代金の中に埋もれてしまいます。すると、社会保険料を払うための元手が、下請の会社まで届かなくなります。そこで国は、見積に法定福利費を内訳として書くことを求めてきました。国土交通省の「各団体が作成した標準見積書」のページにも、同じ趣旨が書かれています(国土交通省)。

令和7年12月から、法律で努力義務になった

2025年12月12日に、改正された建設業法が全面的に施行されました。材料費・労務費・法定福利費(事業主負担分)・安全衛生経費・建設業退職金共済(建退共)の掛金などを記載した見積書(法令では「材料費等記載見積書」)の作成が、努力義務になっています(国土交通省 事務連絡(令和8年3月23日))。

努力義務とは、「できるだけそうするよう努めなさい」という義務です。見積書を受け取る側(注文者)にも、内容を考慮する努力義務があります。

さらに、次の2つは「禁止」です(国土交通省「書き方ガイド(運用編)」令和8年3月)。

  • 受注者が、内訳明示した5つの経費を、通常必要と認められる額より著しく低く見積もること(建設業法第20条第2項)
  • 注文者が、その経費を著しく低くするような見積りの変更を依頼すること(同条第6項)

違反した場合は、指導・監督などの対象になることがあります。どの場合にどの措置になるかは、国土交通省の資料や窓口で確認してください。

見積書のどこに書くか

内訳として書く5つの経費

国土交通省の資料では、見積書で内訳を明示する経費として、次の5つが挙がっています。

見積書で別に書く5つの内訳として、材料費、労務費、法定福利費、建退共掛金、安全衛生経費を縦に並べ、法定福利費を強調した図

ここで気をつけたいのは、「労務費」の意味です。国土交通省の様式例では、労務費は「現場の技能労働者の賃金の原資」にあたる部分で、法定福利費(事業主負担分)は含まれません。だから、法定福利費は労務費とは別の行になります。

「込み」と「別の行」の違い

労務費に込みで書く 別の行で書く
見積書の見え方 「労務費 100万円」だけ 「労務費 100万円」「法定福利費 ○○円」
社会保険料の元手 見積書からは分からない 金額と根拠が見える
元請とのやりとり 「高い」と言われても説明しにくい 根拠を示して説明できる
国の考え方 内訳明示にならない 内訳明示された見積書

見積書の例(架空の数字です)

次の表は、書き方のイメージです。数字はすべて仮のものです。

項目 金額(税抜)
材料費 400,000円
労務費 1,000,000円
法定福利費(事業主負担分) 157,620円
小計 1,557,620円

建退共掛金・安全衛生経費・諸経費は、ここでは省いています。実際の見積書では、使う様式の欄に従って書きます。

書き方の手順(5ステップ)

1. 自社の業種の標準見積書を探す

各専門工事業団体が、業種ごとの「標準見積書」を作っています。国土交通省の「各団体が作成した標準見積書」のページに、団体の一覧と連絡先があります。団体の数は変わることがあるため、ここでは数を書きません。

また、国土交通省の「労務費に関する基準ポータルサイト」には、専門工事業者向けの見積書「様式例」(Excel の詳細版・簡易版)と、書き方ガイドが載っています(労務費に関する基準ポータルサイト)。

業種の団体が見つからないときは、この「様式例」を使えます。国土交通省は、材料費・労務費・法定福利費・建退共掛金・安全衛生経費が適切に内訳明示されていれば、様式は編集してよいとしています(「書き方ガイド(運用編)」)。

2. 見積に計上する労務費を決める

法定福利費の計算のもとになるのは、見積に計上した現場の労務費です。国土交通省の資料では、内訳明示の対象は、現場で働く労働者(技能労働者)の事業主負担分とされています。事務所の職員の分を含めて計算する必要はありません。

3. 法定福利費を出す

基本の考え方は「労務費の総額 × 法定保険料率(事業主負担分)」です(国土交通省「作成手順」)。料率は、保険ごとに公式サイトで調べます。

  • 健康保険:協会けんぽのサイト(健康保険組合に入っている場合は、その組合)
  • 厚生年金保険:日本年金機構のサイト
  • 雇用保険:厚生労働省のサイト

法定福利費 計算ツールは、この計算を都道府県ごとの料率で行います。計算式や料率はツールのページに書いてあるので、この記事では繰り返しません。

2026年度は、子ども・子育て支援金(協会けんぽなどの被用者保険は全国一律0.23%、事業主負担はその半分)が、法定福利費に含まれます(国土交通省 事務連絡、令和8年3月23日。別紙「子ども・子育て支援金を含む法定福利費の算出方法」)。

4. 標準見積書の欄に写す

様式例の「法定福利費の明細書」には、雇用保険料・健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・子ども・子育て拠出金(と、子ども・子育て支援金)の欄があります。ツールで出した金額を、同じ分類で写します。

5. 労災保険の扱いを確認する

国土交通省の作成手順では、労災保険料は内訳明示の対象外(元請が一括して加入)とされています。対象外の部分を会社の判断で内訳に入れることもできますが、その場合は「法定福利費には〇〇を含みます」のように、含めた範囲を見積書に書く必要があります(2026年10月24日確認)。明細の欄は団体の標準見積書ごとに違うので、使う様式の注記にも従ってください。このページの計算ツールは労災保険を含めていません。

数字の例:労務費100万円のとき(架空の例)

ツールと同じ料率で計算した例です。青森県の協会けんぽ、40〜64歳の作業員が全体の20%という仮定です。料率は協会けんぽ・日本年金機構・厚生労働省の令和8年度(2026年度)のもので、協会けんぽ(青森県9.85%)と雇用保険は2026年10月23日に確認しました。

保険 事業主負担の率 金額
健康保険(支援金を含む) 5.04% 50,400円
介護保険(40〜64歳が20%) 0.162% 1,620円
厚生年金(拠出金を含む) 9.51% 95,100円
雇用保険(建設の事業) 1.05% 10,500円
合計 15.762% 157,620円

実際の見積では、作業員の年齢や加入状況、加入している保険によって金額が変わります。厚生年金の料率(18.3%の半分の9.15%)と子ども・子育て拠出金(0.36%)は、この記事では日本年金機構の公式ページで確認できていません。料率は最新を公式サイトで確認してください。料率は毎年度変わるので、見積を出すときにも最新のものを確かめてください。

元請への出し方と、削られたときの対応

見積書に添える一言

見積書の備考や送り状に、次のように書いておくと伝わりやすくなります(文例)。

本見積書では、法定福利費(事業主負担分)を労務費とは別の行に記載しています。算出の根拠は添付の明細書のとおりです。

「込みで」「減らして」と言われたとき

まず、明細書で計算の根拠を見せて説明します。国土交通省は、内訳明示した経費を通常必要と認められる額より著しく低くするような見積りの変更依頼を、注文者がしてはいけないとしています。

それでも話が進まないときの相談先は、国土交通省が案内しています。

  • 駆け込みホットライン:建設業法違反のおそれがある取引について、国土交通省の建設Gメンが情報を受け付けています
  • 建設業相談窓口ナビ:相談先を探せるページです

どちらも、労務費に関する基準ポータルサイトから入れます。

個別の交渉や、法令に当たるかどうかの判断は、国土交通省・都道府県の窓口や専門家に確認してください。この記事で断定はしません。

よくある間違い

間違い 正しくは
労務費に法定福利費を混ぜて書く 労務費は賃金の原資で、法定福利費は別の行
本人負担分まで入れる 法定福利費は事業主負担分だけ
全従業員の賃金で計算する 見積に計上した現場の労務費が対象
前の年度の料率で計算する 料率は年度ごとに変わる。最新を確認する
介護保険を全員に掛ける 介護保険は40〜64歳だけが対象
子ども・子育て支援金を入れ忘れる 2026年度から法定福利費に含める

よくある質問

社会保険の適用除外の人がいる場合は?

見積の段階で誰が対象外かをつかむのは難しいため、国土交通省は、見積段階では全員が加入している前提で内訳明示し、あとで元請と協議して最終的な金額を決めるとしています(事務連絡、令和8年3月23日)。

一人親方の場合は?

一人親方は会社に雇われていないため、会社の法定福利費の計算とは考え方が違います。2026年3月の「書き方ガイド(運用編)」では、一人親方向けの様式が紹介されています。一人親方に仕事を出す場合の扱いは、使う様式の注記を確認してください。

料率はいつ変わる?

保険料率は毎年度見直されます。健康保険は都道府県ごと、雇用保険は事業の種類ごとに違います。令和8年度の建設の事業の雇用保険料率は、合計16.5/1,000(事業主10.5/1,000)です(厚生労働省「令和8年度の雇用保険料率について」)。

まとめ

  • 法定福利費は、労務費とは別の行に、内訳が分かる形で書く
  • 令和7年12月12日から、内訳を書いた見積書の作成は努力義務。著しく低くする見積り・変更依頼は禁止
  • 標準見積書か国の様式例を使い、ツールで出した金額を同じ分類で写す
  • 削られそうなときは、明細で根拠を見せる。困ったら国土交通省の相談先へ

法定福利費の金額は、法定福利費 計算ツールで出せます。

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