労務・制度

建設業の時間外労働の上限規制と勤怠管理|2024年問題で小さな会社がまずやること

公開:2026年10月16日

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「2024年問題と言われても、うちのような小さな会社は何から手をつければいいのか分からない」「残業時間は日報でなんとなく把握しているだけ」。小さな建設会社からは、こうした声がよく聞かれます。

この記事では、まずやることを5つに分けて紹介します。中でも大事なのは次の3つです。36協定(残業をさせるために会社と従業員の代表が結ぶ約束)を上限規制に合わせて見直すこと。一人ひとりの労働時間を客観的に記録すること。そして、移動時間や待機時間をどう数えるかを社内で決めることです。

以下、建設業の時間外労働の上限規制の中身と、小さな会社がまずやることを、厚生労働省の情報をもとに整理します。記事中の法令・制度・料金は、2026年10月16日に公式情報で確認したものです。

この記事で分かること

  • 建設業の時間外労働の上限(原則・特別条項・災害の例外・罰則)
  • 小さな会社がまずやること5つ(チェックリストつき)
  • 紙・Excelの勤怠をクラウドに替えるときの選択肢

建設業の「2024年問題」とは

建設業には、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されています(厚生労働省「はたらきかたススメ 建設業」、2026年10月16日確認)。これにより、残業時間の上限を超えると法律違反になり、罰則の対象になりました。

建設業の時間外労働の上限を、原則(月45時間・年360時間)、特別条項でも守る上限(年720時間、月45時間超は年6回まで、月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内)、災害の復旧・復興の例外(月100時間未満と平均80時間以内だけ外れる)の3段で示した図

原則は月45時間・年360時間

時間外労働(法定労働時間を超えて働く時間)の上限は、原則として月45時間・年360時間です。これを「限度時間」といいます。

特別条項でも超えられない4つの上限

臨時的な特別の事情があるときは、36協定に「特別条項」を付けることで限度時間を超えられます。ただし、特別条項を付けても次の上限は守らなければなりません。

上限 数える時間
年720時間まで 時間外労働
月100時間未満 時間外労働+休日労働
2〜6か月の平均がどれも80時間以内 時間外労働+休日労働
月45時間を超えられるのは年6回まで 時間外労働

出典:厚生労働省「建設業の時間外労働の上限規制」(2026年10月16日確認)

注意したいのは「臨時的な特別の事情」の書き方です。一時的・突発的なものに限られ、できる限り具体的に定める必要があります。「業務の都合上必要なとき」のように、いつでも長時間労働につながる書き方は認められません(同上)。

災害の復旧・復興には例外がある

建設業には、災害の復旧・復興の事業について例外があります(労働基準法139条1項)。この場合、「月100時間未満」と「2〜6か月平均80時間以内」の2つは適用されません。一方で、「年720時間」と「月45時間超は年6回まで」は守る必要があります。

例外を使うには、災害の復旧・復興用の36協定(様式第9号の3の2または第9号の3の3)を結んで届け出ます。対象になるかは実態で判断され、発災と関係のない工事や、将来の災害に備えた補修工事には使えません(同上)。

これとは別に、労働基準法33条1項の「災害等による臨時の必要がある場合」の仕組みもあります。労働基準監督署長の許可(または事後の届出)があれば、36協定の限度とは別に時間外・休日労働をさせることができ、上限規制は適用されません。対象の例は瓦礫の撤去、緊急の機能回復工事、除雪、防疫などで、単なる繁忙は対象外です(同上)。

どちらの例外でも、割増賃金の支払い、長時間労働を抑える取り組み、月80時間を超えた労働者への医師の面接指導は必要です(同上)。

仕組み 外れるもの 残るもの・必要な手続き
災害の復旧・復興(139条1項) 月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内 年720時間、年6回。専用の36協定の締結・届出
災害等の臨時の必要(33条1項) 上限規制そのもの 労基署長の許可(または事後の届出)

違反すると:6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金

上限規制に違反すると、労働基準法119条により「6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金」の対象になります。対象には、法定労働時間(32条)と、月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内の上限(36条6項)が含まれます(e-Gov法令検索「労働基準法」119条、2026年10月16日確認)。

なお、厚生労働省の一般向けのページには、刑法改正前の「懲役」という表記が残っているものもあります。条文では「拘禁刑」です。

小さな会社がまずやること5つ

ここからは、従業員数十名までの会社を想定して、まずやることを順番に紹介します。先に、5つのやることを7つの確認項目に分けたチェックリストを載せます。

チェック やること 根拠・目安
□ 36協定を上限規制に合わせて見直し、労基署に届け出た 厚労省の様式(第9号・第9号の2 など)
□ 特別条項の「特別の事情」を具体的に書いた 「業務の都合上」はNG
□ 一人ひとりの始業・終業時刻を客観的な方法で記録している タイムカード・PCの記録・スマホ打刻など
□ 移動時間・待機時間・直行直帰の扱いを決めて、全員に伝えた 厚労省の例を参考にする
□ 毎月、時間外+休日労働の時間を一人ずつ確認している 月100時間未満・平均80時間以内
□ 月80時間を超えた人への時間の通知と、申出があったときの医師の面接指導の流れを決めた 労働安全衛生規則52条の2・52条の3
□ 労働時間の記録・賃金台帳などを保存している 労働時間の状況は3年、賃金台帳など重要書類は5年(当分は3年)

1. 36協定を見直し、届け出る

法定労働時間を超えて働かせるには、会社と労働者の代表で36協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。36協定では、時間外労働の最大の時間数などを決めます。様式(第9号・第9号の2、災害の復旧・復興用の第9号の3の2・第9号の3の3)は厚生労働省のサイトから入手でき、「労働条件ポータルサイト」で36協定届を作って電子申請することもできます(厚生労働省「建設業の時間外労働の上限規制」、2026年10月16日確認)。

以前の36協定をそのまま更新している会社は、上限規制の数字(月45時間・年360時間、特別条項の4つの上限)に合っているかを確かめましょう。

特別条項を付けるときは、先ほどの通り「特別の事情」を具体的に書きます。たとえば「業務の都合上必要なとき」ではなく、自社で実際に起こりうる臨時の事情を書くようにします。

2. 労働時間を客観的に記録する

上限を守っているかは、労働時間を正しく記録していなければ分かりません。ここは法律でも決められています。

  • 労働安全衛生法66条の8の3:会社は、医師の面接指導を行うために、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない(e-Gov法令検索)
  • 労働安全衛生規則52条の7の3:把握の方法は「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」。記録を作って3年間保存する(e-Gov法令検索)

いずれも2026年10月16日確認です。

厚生労働省の建設業向けサイトでも、会社が自分で確認するか、タイムカードなどの客観的な記録をもとに、日ごとの始業・終業時刻を確認して記録するのが原則とされています。やむを得ず自己申告にする場合は、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)の措置を講じる必要があります(厚生労働省「建設業の時間外労働の上限規制」、2026年10月16日確認)。

日報に「8時〜17時」と書いてもらうだけの運用は、自己申告に近くなります。現場ごとに出退勤の時刻が残る仕組みを用意するのが近道です。

3. 移動時間・待機時間・直行直帰のルールを決める

建設業で迷いやすいのが、現場までの移動や、作業の合間の待ち時間です。厚生労働省の建設業向けサイトでは、次のような例が示されています。

場面 労働時間になる例 労働時間にならない例
現場への移動 会社から社用車への乗り合いを指示されている 直行直帰が自由で、本人の判断で乗り合っている
移動中 使用者や上司が車に同乗し、打合せをしている —
移動の前後 移動前の資材の積込みや、移動後の清掃を指示されている —
待機 指示があればすぐに作業する必要がある。急な対応のため事業場内での待機を命じられ、自由に過ごせない 緊急対応がまれで、自宅待機中の食事・入浴や外出が特に制限されていない

出典:厚生労働省「建設業の時間外労働の上限規制」(2026年10月16日確認)

たとえば「会社に集合して、指示どおり資材を積み、社用車で乗り合って現場へ」という流れなら、積込みも移動も労働時間になる例に当たります。自社の1日の流れに当てはめて、どこから数えるかを決め、従業員に伝えておきましょう。

4. 月80時間を超えた人への通知と医師の面接指導

厚生労働省は、例外の場合も含めて、月80時間を超えた労働者への医師の面接指導が必要だとしています(厚生労働省「建設業の時間外労働の上限規制」、2026年10月16日確認)。

法令上は、週40時間を超えて働いた時間が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる人が申し出たときに、医師の面接指導を行います(労働安全衛生規則52条の2第1項・52条の3)。また、80時間を超えた人には、毎月決まった日に計算したその時間を、速やかに本人に知らせる必要があります(同52条の2第2項・第3項)。出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」52条の2・52条の3(2026年10月16日確認)。

毎月の集計で80時間を超えた人がいないかを確認し、本人への通知と、申出があったときに誰がどう手配するかを決めておきます。

5. 記録を保存する

保存期間は書類によって違います。

書類 保存期間 根拠
労働時間の状況の記録 3年 労働安全衛生規則52条の7の3
労働者名簿・賃金台帳など労働関係の重要な書類 5年(経過措置で当分の間は3年) 労働基準法109条、広島労働局の案内

いずれも2026年10月16日確認です(労働基準法109条はe-Gov法令検索)。紙のタイムカードは、捨てずに年ごとにまとめておきましょう。クラウドの勤怠管理を使う場合も、データを何年残せるか、解約したらどうなるかを確認しておきましょう。

残業代の計算と勤怠の記録はつながっています。給与の基本は給与計算の基本で紹介しています。

繁忙期と閑散期がある会社は「1年単位の変形労働時間制」も

工期の前後で忙しさが大きく変わる会社は、1年単位の変形労働時間制も検討できます。1年を平均して週40時間の範囲で、忙しい時期の所定労働時間を長く、暇な時期を短く設定できる仕組みです。1日の上限は10時間、1週の上限は52時間です。豪雪地帯の屋外労働者などには積雪に関する特例もあります。導入には就業規則への規定と、労使協定の締結・届出が必要です(厚生労働省「建設業の時間外労働の上限規制」、2026年10月16日確認)。

冬に工事が減る雪国の会社では、特に検討の価値があります。細かな条件は、労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。

発注者・元請との関係も見直す

残業を減らすには、社内の工夫だけでは限界があります。国土交通省は「工期に関する基準」や「週休2日達成に向けた取組の好事例集」などを公開しています(国土交通省「建設業」、2026年10月16日確認)。工期の相談をするときの材料として、目を通しておくとよいでしょう。

紙・Excelの勤怠から変えるなら:スマレジ・タイムカード

紙のタイムカードやExcelの日報で勤怠を管理していると、現場に直行直帰する人の時刻が残りにくく、月末に集計して初めて残業の多さに気づく、ということが起こりがちです。

クラウドの勤怠管理(インターネット上で打刻・集計できるサービス)に替えるのも一つの方法です。ここでは例として、株式会社スマレジのタイムカードを紹介します。以下の機能・料金は、2026年10月16日に公式サイトで確認したものです。

10名までは無料プランで打刻の記録ができる

機能 内容
スマホ・PC打刻 スマホ・PC・タブレットのWebブラウザで打刻できる。iPhone・iPad向けのアプリもある
Android 専用アプリはないが、ブラウザで打刻できる
位置情報(GPS) 出退勤時に位置情報を記録。直行・直帰など外出先での記録に使える
顔写真 打刻時に顔写真を撮って本人確認できる
状況の確認 社外で働く従業員の勤怠状況を、管理画面で確認できる
打刻の修正 修正画面で直せる。申請と承認の流れも設定できる

出典:スマレジ・タイムカード「勤怠管理」、公式トップ(2026年10月16日確認)

現場に直行する人もスマホで打刻でき、位置情報と時刻が残ります。先ほどの「客観的な方法で記録する」の第一歩として使いやすい仕組みです。

36協定の超過アラートは「プレミアムプラス」以上

残業時間の上限を超えそうなときに知らせる「労務アラート」機能は、プレミアムプラス以上のプランで使えます。時間外労働時間などの上限値と警告値を設定でき、期間や職種ごとに分けられます。違反したときは、管理者に加えて本人にもメールで知らせることができます(本人への通知は設定で選べます)。特別条項付きの36協定にも対応しています(スマレジ・タイムカード「労務アラート」、2026年10月16日確認)。

無料のスタンダードプランでは労務アラートは使えません。「まず無料で記録を残し、36協定の管理まで自動にしたくなったら上位プランを検討する」という2段階で考えると無理がありません。

料金と30日間のお試し

プラン 月額(税込・10名まで) 主な違い
スタンダード 0円 勤怠管理の機能だけ使いたい会社向け
プレミアム 2,420円 勤怠データのCSVダウンロードはプレミアム以上
プレミアムプラス 4,840円 労務アラート(36協定の超過の通知)はプレミアムプラス以上

出典:スマレジ・タイムカード「料金」(2026年10月16日確認)

  • 11名以上は、どのプランも人数に応じた料金がかかります。くわしくは公式の料金ページで確認してください
  • アカウントを作ってから30日間は、すべての機能を試せます。30日後に上位プランへ切り替えなければ、スタンダードに自動で切り替わります
  • 日報管理などはオプション(有料)です

ネット上には「30名まで無料」「60日間お試し」と書いた記事もありますが、2026年10月16日時点の公式の料金ページでは「10名まで無料」「30日間」です。申し込む前に公式の料金ページを確認してください。

向いている会社・向いていない会社

向いている会社 合わないかもしれない会社
従業員10名前後で、まず無料で打刻を始めたい ICカードで打刻したい(勤怠管理の機能ページに記載がなかったため、問い合わせで確認が必要)
直行直帰が多く、スマホと位置情報で記録を残したい Androidの専用アプリを使いたい(ブラウザでの打刻になる)
将来は36協定の上限をアラートで管理したい —

給与計算の機能もあり、freee・マネーフォワード クラウド給与・弥生給与を使っている会社でも利用できると案内されています(スマレジ・タイムカード「給与計算」、2026年10月16日確認)。給与計算はプレミアム以上のプランの機能です(料金ページ、2026年10月16日確認)。そのほかのプランごとの対象機能は、公式サイトで確認してください。

資料請求や問い合わせは、スマレジのタイムカードの公式サイトからできます。

まとめ

  • 建設業は2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されている。原則は月45時間・年360時間
  • 特別条項を付けても、年720時間、月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内、月45時間超は年6回までは守る
  • 災害の復旧・復興では「月100時間未満」「平均80時間以内」だけが外れる。専用の36協定が必要
  • 違反は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象
  • まずは36協定の見直し、客観的な記録、移動・待機時間のルール決めから
チェック やること
□ 36協定を見直し、届け出た
□ 始業・終業時刻を客観的な方法で記録している
□ 移動・待機・直行直帰の扱いを決めて伝えた
□ 毎月、時間外+休日労働を一人ずつ確認している
□ 記録を3年(賃金台帳などは5年、当分は3年)保存している
□ 月80時間を超えた人に時間を知らせ、面接指導の流れを決めた

長時間労働は、若手が辞める理由にもつながります。定着のための取り組みは若手職人が辞める5つの理由と、辞めない建設会社がやっていること、辞めたときの損失は離職コスト計算ツールで確かめられます。見積の労務費まわりは法定福利費 計算ツールも使ってみてください。

制度の細かな運用は変わることがあります。36協定の書き方や個別の判断に迷ったときは、労働基準監督署や社会保険労務士に相談してください。厚生労働省の「建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」や「Q&A」「Q&A追補」も参考になります。