若手職人が辞める5つの理由と、辞めない建設会社がやっていること
「やっと採用できた若手が、1年もたたずに辞めてしまった」。採用に苦労している建設会社ほど、この悩みは深刻です。求人費をかけ、現場で手間をかけて教えた分、辞められたときの損失は小さくありません。
若手が辞める理由は、「最近の若い人は根性がない」で片づけられがちです。しかし実際に話を聞いてみると、理由の多くは会社側の工夫で防げるものです。
支援の現場から これまで支援してきた建設会社で、若手が辞めた理由として多く聞いたのは「社風が合わなかった」「聞いていた仕事内容と違った」「人間関係がうまくいかなかった」の3つでした。 一方で、若手が定着するようになった会社では、人事評価制度を導入して「やるべきこと」が明確になった、SNSでの発信を始めたことで社内の雰囲気が明るくなった、外部の教育・研修を取り入れて知識とチームワークが高まった、といった変化がありました。
若手職人が辞める5つの理由
1. 何を教わっているのか分からない
「見て覚えろ」「そのうち分かる」という教え方は、今の若手には通用しにくくなっています。毎日現場には出ているのに、自分が何をできるようになったのか、あと何を覚えればいいのかが分からない。この状態が続くと、「この仕事を続けても成長できない」と感じてしまいます。
2. 叱られ方がきつい
現場は危険と隣り合わせなので、強い口調で注意しなければならない場面もあります。問題は、安全のための注意と感情的な怒りの区別がついていないことです。人格を否定するような言葉や、人前での長い叱責は、若手が辞める大きなきっかけになります。
3. 相談できる人がいない
職長や先輩は忙しく、若手は「こんなことを聞いたら怒られるかも」と遠慮しがちです。仕事の悩みだけでなく、通勤や生活の小さな困りごとを相談できる相手がいないことも、孤立感につながります。
4. 将来の姿が見えない
何年働いたら、どんな仕事を任され、給料がどれくらいになるのか。それが見えないと、若手は「ここにいていいのか」と不安になります。特に同世代の友人が他業種で働いている場合、比べられやすくなります。
5. 入社前に聞いていた話と違う
休日、残業、朝の集合時間、雨の日の扱い、現場までの移動時間。入社前の説明と実態が違うと、それだけで会社への信頼が失われます。これは求人原稿や面接での伝え方の問題でもあります。
辞めない会社がやっていること
「教える順番」を決めている
若手が定着している会社は、入社後に何をどの順番で覚えるかを決めています。立派なマニュアルでなくても、A4一枚の「できることリスト」で十分です。
| 時期 | できるようになること(例) |
|---|---|
| 1か月 | 道具の名前と片付け場所を覚える。朝礼・KY活動に参加する |
| 3か月 | 資材の運搬・荷揚げを安全にできる。決まった補助作業を任せられる |
| 6か月 | 簡単な作業を一人でこなせる。翌日の準備を自分でできる |
| 1年 | 担当作業を一通りこなせる。後から入った新人に道具を教えられる |
月に1回、このリストを見ながら「ここまでできるようになったね」と確認するだけで、若手の安心感は大きく変わります。
「相談役」を決めている
直属の職長とは別に、年の近い先輩を相談役(メンター)として決めておく会社が増えています。仕事を教える役ではなく、困ったときに声をかけられる役です。最初の3か月は、週に1回5分でも話す時間を作るのがおすすめです。
叱り方のルールを共有している
「危ないことはその場ではっきり止める」「理由を必ず説明する」「人前で長く叱らない」「人格ではなく行動を注意する」。こうしたルールを、社長から職長・先輩へ言葉にして伝えている会社は、若手の離職が少ない傾向があります。
将来の道筋を見せている
人事評価制度のような仕組みがなくても、「見習い → 一人前 → 職長」の段階と、それぞれの目安となる年数・資格・給与を一枚にまとめて見せるだけで、若手は将来を想像しやすくなります。資格取得の費用を会社が負担する制度も、「この会社は自分を育ててくれる」というメッセージになります。施工管理技士なら、2024年度から第一次検定は年齢だけで受けられるようになり、若手のうちから挑戦させやすくなりました。会社での支援の仕方は「施工管理技士の資格取得を会社で支援する方法」にまとめています。
入社前に「ありのまま」を伝えている
職場見学や面接で、良いところだけでなく大変なところも正直に伝えている会社ほど、入社後のギャップが小さく、定着しやすくなります。若手社員に面接や見学の案内に同席してもらい、本音で話してもらうのも効果的です。
まず1つだけ始めるなら
全部を一度に始める必要はありません。最初の一歩としておすすめなのは、A4一枚の「できることリスト」を作ることです。社長と職長で30分話せば作れますし、若手の育成と定着の両方に効きます。
まとめ
- 若手が辞める理由の多くは、会社側の工夫で防げる
- 「教える順番」をA4一枚にまとめ、月1回できたことを確認する
- 職長とは別に、相談役の先輩を決める
- 叱り方のルールを言葉にして共有する
- 将来の道筋と、入社前の「ありのまま」を伝える
若手の定着は、採用と同じくらい大切な「人の投資」です。1人辞めると会社がいくら損をするのかは、離職コスト計算ツールで試算できます。採用単価が分からない場合は、先に採用コスト計算ツールで確認してみてください。