採用に効く社員インタビュー記事の作り方|建設会社がそのまま使える質問リストつき
「求人に社員の声を載せたほうがいいと聞くけれど、何を聞いて、どうまとめればいいのか分からない」。採用に力を入れ始めた建設会社でよくある悩みです。
求職者がいちばん知りたいのは、「この会社で働いたら、自分はどうなるのか」です。給与や休日は求人票で分かります。しかし、職場の雰囲気や最初の1年の様子は、実際に働いている人の言葉でしか伝わりません。社員インタビューは、その役割を担う記事です。
この記事では、従業員5〜50名の建設会社が、外注せずに自社で社員インタビュー記事を作るための手順を、そのまま使える質問リストつきで紹介します。
結論:インタビュー記事は6つの手順で作る
先に全体の流れをまとめます。
| 手順 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 話を聞く人を決める | 来てほしい人に近い社員を選ぶ | 最初の1本は入社1〜3年目が作りやすい |
| 2. 質問を用意する | 下の質問リストから10問ほど選ぶ | 事前に本人へ渡しておく |
| 3. 取材する | 30〜45分、社長は同席しない。写真も撮る | 録音して、メモは最小限に |
| 4. 型にまとめる | 決まった構成に当てはめて書く | 本人の言葉をなるべく残す |
| 5. 本人確認と同意 | 原稿と写真を見てもらい、書面で同意をもらう | 載せる場所と期間も伝える |
| 6. 載せる | 採用サイト・求人票・SNSで使い回す | 1本を何か所でも使う |
作業時間だけで見ると、半日〜1日ほどが一つの目安です(本人確認を待つ日数は別)。1本作れば、求人票・採用サイト・学校訪問の資料など、いろいろな場所で使えます。
手順1:誰に話を聞くか
いちばん大事なのは、「来てほしい人に近い社員」に話を聞くことです。読む人は、自分と似た立場の人の話に自分を重ねます。
| 来てほしい人 | 話を聞く社員 |
|---|---|
| 高校新卒 | 高卒で入社して1〜3年目の若手 |
| 異業種からの転職者 | 未経験で転職してきた社員 |
| 資格を持つ経験者 | 他社から転職してきた施工管理・職長 |
| 女性の応募者 | 現場や事務で働く女性社員 |
| 地元へ戻りたい人 | Uターンで入社した社員 |
最初の1本は、入社1〜3年目の若手がおすすめです。入社したころの不安や戸惑いをまだよく覚えていて、求職者に近い目線で話せるからです。
本人がいやがるときは無理をしない
インタビューは本人の協力があって初めて成り立ちます。「顔は出したくない」「名前は伏せたい」という希望があれば、後ろ姿の写真や、名前をイニシャルにするなどの形で対応します。断っても評価に響かないことも、はっきり伝えておきましょう。
手順2:そのまま使える質問リスト
質問は全部聞く必要はありません。下のリストから10問ほど選び、取材の数日前に本人へ渡しておきます。事前に考えておいてもらうと、当日の答えが具体的になります。
入社前のこと
- 前は何をしていましたか(学生・別の仕事など)
- この会社を知ったきっかけは何でしたか
- 応募する前、建設の仕事にどんなイメージを持っていましたか
- 入社を決めた理由を1つ挙げるとしたら何ですか
入社してからのこと
- 入社した日のことで覚えていることはありますか
- 最初の1か月は、どんな仕事をしていましたか
- 入ってみて「思っていたのと違った」ことはありますか(良いことでも悪いことでも)
- 仕事を覚えるとき、誰にどんなふうに教わりましたか
今の仕事のこと
- 今はどんな現場で、どんな仕事をしていますか
- 今日(または最近)の作業で、いちばん気を使ったのはどこですか
- ある日の1日の流れを教えてください(集合時間から帰るまで)
- 仕事でいちばん大変なのはどんなときですか
- その大変さを、どうやって乗り越えていますか
- 「この仕事をしていてよかった」と思った場面を1つ教えてください
職場のこと
- 困ったとき、最初に相談するのは誰ですか
- 先輩や上司に言われて、印象に残っている言葉はありますか
- 休みの日はどう過ごしていますか(話せる範囲で)
これからのこと
- 今、取ろうとしている資格や、できるようになりたい仕事はありますか
- 3年後、どんな仕事をしていたいですか
- 応募を迷っている人に、一言伝えるとしたら何と言いますか
答えを深めるひと言
答えが短いときは、次のひと言で1回だけ深掘りします。
- 「たとえば、どんな場面ですか」
- 「そのとき、どう思いましたか」
- 「それは、入社前と比べてどう変わりましたか」
「大変なことは何ですか」に「特にないです」と返ってくることはよくあります。その場合は「入社1年目で、いちばん疲れた日はどんな日でしたか」のように、場面をしぼって聞き直すと答えやすくなります。
質問は、大きく聞くより具体的に聞くのが基本です。「やりがいは何ですか」と聞かれると、多くの人は答えに困ります。「今日の作業で、いちばん気を使ったのはどこですか」のように、その日の作業から聞き始めると話しやすくなります。
支援の現場から 社員インタビューでは、会議室で向かい合って聞くより、現場での作業中やその合間に話しかけたほうが本音が出ました。質問も「やりがいは?」のような大きな聞き方ではなく、その日の作業など具体的なことを聞いたほうが、話が出てきやすくなります。
作業中に声をかけるのは、手を止めても危なくない場面に限ります(詳しくは手順3)。
手順3:取材の進め方
事前に伝えておくこと
- 何のための取材か(採用サイトや求人票に載せる記事であること)
- かかる時間(30〜45分)と場所
- 質問リスト(全部答えなくてよいこと)
- 写真を撮ること、顔や名前を出すかは後で決められること
当日のポイント
- 聞き手は社長以外にする:総務担当や、本人と年の近い先輩が向いています。社長が同席すると建前の答えになりやすくなります
- 場所は話しやすいところで:会議室で向かい合うより、現場で作業の合間や休憩中に話しかけるほうが話しやすいこともあります。作業の安全に支障のないタイミングを選び、聞き足りない分は休憩所などで補います
- 録音する:スマートフォンの録音で十分です。本人に録音してよいか先に確認し、記事を作ったあとは消すと伝えておきます
- メモは最小限に:書くことに集中すると、相手の話を聞き逃します。録音があれば、気になった言葉だけメモすれば足ります
- 良い話だけを集めない:大変なことや戸惑ったことも、そのまま聞きます
良いことしか書かれていない記事は、かえって信用されにくいものです。たとえば「最初の夏は本当にきつかった。でも先輩が水分補給のタイミングを教えてくれて慣れた」のように、大変さと、それを支える仕組みがセットで書かれていると説得力が出ます。若手が入社後につまずきやすい点は若手職人が辞める5つの理由と、辞めない建設会社がやっていることも参考にしてください。
写真の撮り方
写真は、文章と同じくらい大事です。プロのカメラマンでなくても、スマートフォンで十分に伝わる写真が撮れます。
| 撮る写真 | ポイント |
|---|---|
| 働いている姿 | 作業中の手元や、重機・道具を扱っている場面 |
| 顔が分かる写真 | 正面を向いた自然な表情。休憩中の笑顔も使いやすい |
| 先輩・同僚といる姿 | 教わっている場面や、打ち合わせの様子 |
| 現場の全体 | 本人がどんな場所で働いているか分かる引きの写真 |
撮るときに気をつけること
- 安全装備を正しく着けた状態で撮る:ヘルメットのあごひもや墜落制止用器具(いわゆる安全帯)が外れていると、安全意識の低い会社に見えます
- 写り込みに注意する:施主名が分かる看板、他社の社員、車のナンバー、個人の住所が分かるものは写さないか、ぼかします
- 横向きと縦向きの両方を撮る:採用サイトは横長、SNSは縦長や正方形を使うことが多いためです
雨の日の段取りを決めておく
屋外の現場は、天気で予定が崩れやすいものです。取材日を決めるときに、雨の日の予備日もあわせて決めておきます。話は屋内で先に聞き、写真だけ晴れた別の日に撮る形でもかまいません。
支援の現場から よくある失敗が、取材の日に雨が降って現場に出られず、写真が撮れないことです。天気で予定が崩れてしまいます。
手順4:記事の構成の型
毎回同じ型に当てはめると、書くのが楽になり、何本か並べたときも読みやすくなります。
| 順番 | 見出し | 中身 |
|---|---|---|
| 1 | タイトル | 本人の言葉から一文を選ぶ |
| 2 | プロフィール | 名前(または仮名)・職種・入社年・前職 |
| 3 | 入社のきっかけ | 会社を知った経緯と、決めた理由 |
| 4 | 入ってみて | 最初の1か月、思っていたのと違ったこと |
| 5 | 今の仕事 | 1日の流れ、大変なことと乗り越え方 |
| 6 | 職場の人 | 相談相手、印象に残っている言葉 |
| 7 | これから | 取りたい資格、3年後の目標 |
| 8 | 応募を迷っている人へ | 本人からの一言 |
タイトルは本人の言葉から
「先輩社員インタビュー」だけでは、読み飛ばされやすくなります。取材の中で出てきた本人の言葉を、そのままタイトルにします。
例:タイトルの付け方 よくある形:若手社員インタビュー|土木部 Aさん 伝わる形:「最初の3か月は片付けばかり。でも、それで現場の流れが分かった」
話し言葉を整えすぎない
録音を文字にすると、話し言葉は読みにくいものです。ただ、きれいに整えすぎると本人らしさが消えます。言い直しや「えーと」は削りつつ、方言や口ぐせは少し残すくらいがちょうどよいバランスです。本人が言っていないことを付け足したり、話を大きくしたりはしません。
長さは、スマートフォンで読み切れる量が目安です。全部を載せようとせず、印象に残った話を3つほどにしぼると読みやすくなります。
手順5:本人確認と同意
社員インタビューでは、社員の名前・顔写真・経歴を外に向けて公開します。トラブルを防ぐため、次のことを決めておきましょう。
同意は書面でもらう
口頭の「いいですよ」だけでなく、同意書に名前を書いてもらいます。同意書には次の項目を入れておくと安心です。
- 載せる内容(記事の本文・写真)
- 載せる場所(採用サイト、求人票、SNS、印刷物など)
- 名前の出し方(フルネーム・名字だけ・イニシャル・出さない)
- 顔写真を出すかどうか
- 載せる期間と、退職したときの扱い
- 途中で取り下げたくなったときの連絡先
原稿は公開前に本人に見せる
書き上げた原稿と使う写真は、必ず公開前に本人に見てもらいます。本人が「これは載せないでほしい」と言った部分は削ります。
載せない情報を決めておく
家族構成、住んでいる地域、出身校などは、本人が話してくれても載せるかどうか慎重に判断します。特に家族の話は、本人だけでなく家族の情報にもなります。迷ったら載せない、を基本にしましょう。
退職したときの扱いを決めておく
社員が退職したあとも記事が残っていると、本人にも、読んだ求職者にも良くありません。「退職したら1か月以内に取り下げる」など、扱いを先に決めて同意書に書いておきます。
個人情報の扱いは、個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」で確認できます(2026年10月14日確認)。
手順6:載せる場所と使い回し方
1本のインタビューは、いろいろな場所で使えます。作った記事は、少しずつ形を変えて何度も使いましょう。
| 載せる場所 | 使い方 |
|---|---|
| 採用サイト・会社ホームページ | 記事の全文と写真を載せる。ここを本体にする |
| 求人票 | 「先輩の声」として2〜3行に要約し、採用サイトへの案内を添える |
| SNS | 印象に残った一言と写真1枚で投稿し、記事へつなぐ |
| 学校訪問・会社説明会 | 1枚に印刷して先生に渡し、生徒への説明に使ってもらう(会社説明会では参加者に配る) |
| 面接 | 面接前に読んでもらい、入社後の様子を伝える材料にする |
求人票に社員の声を入れるときの書き方は建設業の求人原稿の書き方で、学校訪問の進め方は高校生採用の進め方で紹介しています。
面接で会社のありのままを伝えるときにも、インタビュー記事は役に立ちます。面接の進め方は建設業の面接で聞くべき質問・聞いてはいけない質問を参考にしてください。
2022年10月の職業安定法の改正で、求人企業にも、求人の情報を正確で最新の内容に保つことや、うそや誤解を招く表示をしないことが義務づけられました。採用サイトを速やかに更新することや、いつ時点の情報かを示すことが例として挙げられています(厚生労働省「求人企業の皆さまへ」リーフレット、厚生労働省「令和4年職業安定法の改正について」、2026年10月14日確認)。インタビューで給与や休日に触れる場合は、今の条件と食い違っていないか確認し、記事に取材した時期を書いておきましょう。
よくあるつまずき
- 社長が聞き手になり、建前の答えばかりになる
- 良い話だけを集めて、どの会社にもありそうな記事になる
- 写真が集合写真だけで、本人の働く姿が分からない
- 取材の日が雨で現場に出られず、写真が撮れない
- 「やりがいは?」のような大きな質問ばかりで、どの会社にもある答えになる
- 一度作って、何年も更新しない(本人が退職していることもある)
インタビュー記事は、年に1〜2本ずつでも十分です。人が増えるたびに記事も増え、会社の雰囲気が少しずつ伝わるようになります。
まとめ
- 話を聞くのは「来てほしい人に近い社員」。最初は入社1〜3年目がおすすめ
- 質問はリストから10問ほど選び、事前に本人へ渡す
- 聞き手は社長以外にし、大変なことも含めて聞く
- 構成は決まった型に当てはめ、タイトルは本人の言葉から選ぶ
- 写真は取材の日に、働く姿を中心に撮る。安全装備と写り込みに注意する
- 公開前に原稿を本人に見せ、載せる場所・期間・退職時の扱いを書面で同意してもらう
- 採用サイトを本体にして、求人票・SNS・学校訪問で使い回す
まずは、来てほしい人に近い社員を1人決めて、質問リストから10問を選ぶところから始めてみてください。