労務・制度

日給月給制から月給制に変える手順|建設会社の計算例と社員への説明

公開:2026年10月25日

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この記事の結論

  • 切り替えは「決める → 試算する → 説明して同意をもらう → 規程と給与計算を直す」の順に進める
  • 月給は「日給 × 年間の所定労働日数 ÷ 12」で出せる。割増賃金の時間単価は月給 ÷ 月平均の所定労働時間
  • 労働条件の変更は労使の合意が原則。一人ずつ手取りの変化を計算して見せる
  • 雨や現場都合で休む日の扱いを、先に決めておく

公式情報の確認日:2026年10月25日

目次(9項目)
  1. 日給制・日給月給制・月給制の違い
  2. 切り替えの前に決めること
  3. 月給の決め方と計算例
  4. 社員への説明と同意の取り方
  5. 賃金規程・労働条件通知書の直し方
  6. 切り替え後の給与計算を回す
  7. 雨や現場都合で休む日の扱い
  8. よくある質問
  9. まとめ

「若手や応募者から、月給制にしてほしいと言われた」「雨の日に給料を出すことになるのが心配」「月給にしたら、手取りが減る社員が出ないか」。日給月給制の建設会社の社長や総務の方から、よく出る悩みです。

結論から言うと、切り替えで大事なことは3つです。1つ目は、先に「何を変えるか」を決めること(休んだ日、雨の日、手当の扱い)。2つ目は、社員一人ずつの手取りがどう変わるかを計算して見せること。3つ目は、労働条件の変更は労使の合意が原則なので、同意と規程の変更を手順どおりに行うことです。

この記事では、切り替えの手順を、計算例つきで順に説明します。記事中の法令・料金は、特に書いていない限り2026年10月25日に公式情報で確認したものです。

この記事で分かること

  • 日給制・日給月給制・月給制の違い
  • 切り替えの前に決めること
  • 日給から月給への換算と、残業の時間単価の計算例
  • 社員への説明と同意の取り方、賃金規程の直し方
  • 雨や現場都合で休む日の扱い

日給制・日給月給制・月給制の違い

「日給月給制」は、法律で決まった呼び方ではありません。この記事では、次の意味で使います。

日給月給制は月の給与が出た日数で変わり、月給制は毎月ほぼ同額で休んだ分の扱いを規程で決める、という違いを2段で示した図

項目 日給制 日給月給制 月給制
給与の決まり方 日給を働いた日ごとに払う 日給を決め、月にまとめて払う 月の給与額を決めて払う
月の給与 出た日数で変わる 出た日数で変わる 毎月ほぼ同じ
休んだ日 払わない 払わない(日数分が減る) 規程で決める
雨で現場が止まった日 働いていなければ払わない(会社の責任による休業は休業手当の問題になる場合あり) 働いていなければ払わない(会社の責任による休業は休業手当の問題になる場合あり) 規程で決める(休業手当の問題になる場合もある)

日給制と日給月給制の違いは、払うタイミングです。どちらも「出た日数分」が給与になる点は同じなので、月給制に変えるときの論点はほぼ同じです。

月給制に変える会社は、求人で給与の見込みを示しやすくなり、社員も月の収入が見通しやすくなります。これは当サイトの考えで、全国的な増減の数字は確認できていません。

切り替えの前に決めること

月給制にするといっても、「月給にします」だけでは決まりません。次の6つを、先に決めます。

決めること 内容
年間の休日 年間に何日休みにするか(会社の休日カレンダー)
年間の所定労働日数 365日から年間休日を引いた日数
1日の所定労働時間 始業・終業・休憩から決める
欠勤・遅刻・早退の扱い 休んだ分を月給から引くか、引くなら1日いくらか
雨や現場都合で休む日の扱い 出勤扱いにするか、休みにするか
手当の整理 日給に含めるもの、別に払うもの

特に、雨の日の扱いは社長が気にするところです。

支援の現場から

日給制(日給月給制)から月給制に切り替えるとき、社長がいちばん心配されるのは、天候による稼働制限です。雨などで現場に出られない日も給与が出ることになるためです。

この心配には、「雨の日の扱いを先に決めておく」ことで対応します。具体的な考え方は、後の「雨や現場都合で休む日の扱い」で説明します。

月給の決め方と計算例

月給の換算には、次の式を使います。

月給 = 日給 × 年間の所定労働日数 ÷ 12

これで、今までの日給で働いた場合の「年間の給与」を、12か月に均等に分けられます。以下の数字は、計算の例です(実際の会社の数字ではありません)。

例:日給15,000円、1日の所定労働時間8時間。年間の所定労働日数を、休日の決め方によって250日・260日・270日とした場合。

年間の所定労働日数 月給 月平均の所定労働時間 時間単価
250日 312,500円 約166.7時間 1,875円
260日 325,000円 約173.3時間 1,875円
270日 337,500円 180時間 1,875円

計算の中身は次のとおりです。

  • 月給:15,000円 × 250日 ÷ 12 = 312,500円(260日なら325,000円、270日なら337,500円)
  • 月平均の所定労働時間:8時間 × 250日 ÷ 12 = 約166.7時間(260日なら約173.3時間、270日なら180時間)
  • 時間単価:312,500円 ÷ 約166.7時間 = 1,875円(どれも同じ)

月給の割増賃金の時間単価は、月給を「1か月の所定労働時間(月によって違うときは、1年間の1か月平均)」で割って出します(労働基準法施行規則19条、2026年10月25日確認)。日給のときの時間単価(15,000円÷8時間=1,875円)と、同じ結果になっていることが確認できます。時間外1時間の割増賃金は、1,875円 × 1.25 = 2,343.75円です。割増率や、日給制の時間単価の出し方は、建設会社の給与計算の基本で説明しています。

手取りが下がらないかを一人ずつ確認する

月給は「所定労働日数」をどう決めるかで変わります。日給月給のときの実際の給与と比べると、次のようになります。

月 出た日数 日給月給のときの給与 月給制(260日の例)
A月 18日 270,000円 325,000円
B月 22日 330,000円 325,000円

雨の多い月や休みの多い月は、月給制のほうが上がります。出た日数の多い月は、わずかに下がることがあります。年間では、実際の出勤日数が所定労働日数より多い人は、月給制のほうが下がります。

確認の手順は次のとおりです。

  1. 社員ごとに、過去12か月の給与(基本給の部分)の合計を出す
  2. 月給の案 × 12 と比べる
  3. 下がる人がいれば、日給の額や手当、所定労働日数の決め方を見直す

比較には、次のような一覧を使うと、説明のときにも役立ちます。

社員 過去12か月の合計 月給案 × 12 差
〇〇さん 円 円 円
△△さん 円 円 円

最低賃金を下回らないかの確かめ方は、給与計算の基本の記事に厚生労働省の計算例があります。

休んだ日を引くときは、1日の額を決めておく

欠勤や遅刻の分を月給から引く場合は、1日あたりをいくらにするかを決めておきます。例えば、「月給 ÷(年間の所定労働日数 ÷ 12)」とすれば、上の例(月給325,000円、年間260日)では、1日あたり15,000円で、今までの日給と同じです。引き方の決まりは会社ごとに違います。規程に書く前に、社労士などの専門家に確認してください。

社員への説明と同意の取り方

労働条件の変更は、会社と社員の合意で行うのが原則です(労働契約法8条、2026年10月25日確認)。

一方、会社が就業規則を変更して、社員の不利益になるように労働条件を変えることは、原則としてできません(同法9条)。例外は、変更後の就業規則を社員に周知し、変更が合理的な場合です。合理的かどうかは、社員の受ける不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合などとの交渉の状況などから判断されます(同法10条)。ただし、労働契約で「就業規則の変更では変えない」と合意していた部分は、就業規則の変更では変えられない場合があります(同条ただし書き)。

つまり、手取りが下がる社員が出る場合は、とくに注意が必要です。不利益の有無を一人ずつ確認し、下がる人がいるなら、補う手当を付けるなどして、個別に説明し同意をもらいます。判断が難しいときは、社労士や弁護士に相談してください。

説明は、次の順に進めます。

  1. 月給制に変える理由を伝える(採用や、収入の見通しの立てやすさなど)
  2. 変わること、変わらないことを伝える(休日、残業代、手当など)
  3. 本人の手取りの比較表を見せる
  4. 雨の日、休んだ日の扱いを説明する
  5. 質問を受ける時間をとり、同意を書面に残す

社員全員を同時に切り替える必要はありません。ただし、同じ職種で月給制と日給月給制が混ざると、規程と給与計算が複雑になります。会社の規模や職種ごとに、切り替えの時期を決めてください。

賃金規程・労働条件通知書の直し方

切り替えで直す書類は、次のとおりです。

書類 直すこと
就業規則(賃金規程) 給与の種類(月給)、計算方法、欠勤などの控除、支払日、割増賃金の時間単価
労働条件通知書(雇用契約書) 賃金の決定・計算・支払の方法、休日、始業・終業の時刻、所定労働時間
給与明細・賃金台帳 基本給の項目名、欠勤控除の項目
求人票・採用サイト 給与の表示を月給にそろえる

就業規則は、常時10人以上の労働者を使う会社に、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。賃金の決定・計算・支払の方法は、書く項目として定められています。変更するときは、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は、過半数を代表する者)の意見を聞き、その意見を書いた書面を添えて届け出ます(労働基準法89条・90条、2026年10月25日確認)。

労働条件通知書は、労働契約を結ぶときに、賃金や労働時間などを書面で渡す決まりがあります(労働基準法15条、同法施行規則5条)。切り替えのときも、新しい内容の通知書を渡して、署名をもらうと確実です。

10人未満の会社でも、賃金の決め方は文書に残しておくと、あとで食い違いが起きにくくなります。

月給の額が変わると、社会保険料に影響する場合があります。変わる時期や手続きは、年金事務所や社労士に確認してください(この記事では公式情報を確認していません)。

切り替え後の給与計算を回す

月給制にすると、次の点が日給月給制のときと変わります。

  • 毎月の基本給が同額になる
  • 欠勤・遅刻の控除を計算する
  • 時間外の割増賃金は、月給から出した時間単価で計算する

勤怠の集め方は、建設業の時間外労働の上限規制と勤怠管理で紹介しています。

従業員20名未満の会社は、弥生給与 Nextの無料体験(最大2か月)で、自社の給与の形(日給・月給・手当)を設定できるかを試せます。無料体験の対象は20名未満の事業者で、20名以上の会社は対象外です(弥生の公式サイトで2026年10月25日に確認)。

雨や現場都合で休む日の扱い

月給制にするとき、雨や現場の都合で出られない日をどう扱うかは、次の2つに分けて考えます。

  1. 会社のきまりとして、その日を出勤扱いにする(月給から引かない)か、休みとして引くかを決める
  2. 会社の責任で社員を休ませたときは、法律で休業手当が必要になる場合がある

会社の責任で休ませた場合は、平均賃金の60%以上の休業手当を払う必要があります(労働基準法26条、2026年10月25日確認)。地震や災害などの不可抗力で休んだ場合は除かれます。雨で現場が止まった日が、会社の責任にあたるかどうかは事情で変わります。迷ったときは、労働基準監督署に確認してください。詳しくは給与計算の基本の記事に書いています。

実務では、次のどれにするかを賃金規程に書いておきます。

  • 雨の日も月給から引かない(出勤扱い、または会社の休みとして扱う)
  • 雨の日は、規程に書いた方法で、休みとして月給から引く(休業手当との関係に注意)
  • 雨の日は、室内作業や別の現場に回す

どれが合うかは、年間の雨の日数や現場の種類で変わります。年間の所定労働日数を決めるとき、雨で止まる日を見込んで余裕のある日数にしておく方法もあります。

よくある質問

月給制にすると、残業代は出なくなりますか?

出なくなりません。月給制でも、時間外・休日・深夜の割増賃金は払う必要があります。時間単価は、月給 ÷ 月平均の所定労働時間で出します。

社員全員を同時に切り替える必要はありますか?

ありません。ただし、職種などで切り替えの時期を分けるときは、分ける理由を説明できるようにしておきます。

雨の日は給料を払うのですか?

会社の規程で決めます。会社の責任で休ませた場合は、平均賃金の60%以上の休業手当が必要になることがあります。事情によって変わるので、迷ったときは労働基準監督署に確認してください。

日給で働く若手を月給にするとき、試用期間はどうしますか?

試用期間中の月給や欠勤の扱いも、労働条件通知書に書いて渡します。試用期間の給与を本採用より低くするなら、その金額と期間も書面に書いてください。

まとめ

  • 切り替えは、決める → 試算する → 説明して同意をもらう → 規程と給与計算を直す、の順に進める
  • 月給は「日給 × 年間の所定労働日数 ÷ 12」。時間単価は月給 ÷ 月平均の所定労働時間
  • 労働条件の変更は労使の合意が原則(労働契約法8条)。手取りが下がる人がいないかを一人ずつ確認する
  • 就業規則は、常時10人以上の会社には作成・変更の届出の義務がある
  • 雨や現場都合で休む日の扱いは、先に規程で決める。会社の責任なら休業手当が必要になることがある

切り替えの4手順。1 決める、2 試算する、3 説明して同意をもらう、4 規程と給与計算を直す、を縦に並べた図

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