労務・制度

建設会社の有給5日取得義務|現場を止めにくい会社の進め方と管理簿

公開:2026年10月19日

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目次(7項目)
  1. 年5日の義務の基本
  2. 会社が先にやっておくこと
  3. 建設業で止まりやすい4つのポイント
  4. 取得計画の作り方
  5. 年次有給休暇管理簿の作り方
  6. 紙・Excelで管理が回らなくなったら:スマレジ・タイムカード
  7. まとめ

「有給の年5日は義務だと聞いたが、現場を止められない」「日給の職人もいて、誰がいつ取ったか分からない」。建設会社の社長や総務の方から、こうした声がよく聞かれます。

この記事では、年5日の義務の中身と、現場を止めにくい会社の進め方を整理します。大事なのは次の4つです。

  1. 対象は、年10日以上の有給が付与される人(パート・有期の人、管理職も含む)
  2. 基準日(有給を付与した日)から1年以内に、5日を取らせる。取らせたことまで必要
  3. 取らせる方法は「本人の請求」「会社の時季指定」「計画年休」の3つ。合計5日で足りる
  4. 年次有給休暇管理簿を作り、保存する

記事中の法令・制度・料金は、2026年10月19日に公式情報で確認したものです。

この記事で分かること

  • 年5日の義務の対象者と数え方(基準日から1年)
  • 違反したときの罰則と、会社が先にやっておくこと
  • 日給の人・入社日がバラバラな人・工期で休みが動く現場での進め方
  • 取得計画表と年次有給休暇管理簿のひな形
  • 紙・Excelで管理が回らなくなったときの選択肢

年5日の義務の基本

年次有給休暇(年休)は、働く人が請求する時季に与えるのが原則です。そのうえで、年10日以上の年休が付与される人については、会社が年5日分の時季を決めて与えなければならないと、2019年4月から労働基準法39条7項で決められています(e-Gov法令検索「労働基準法」39条、2026年10月19日確認)。

項目 内容
対象者 法律で年10日以上の年休が付与される人。管理監督者(管理職)や有期雇用の人も含む
取らせる日数 年5日
期限 年休を付与した日(基準日)から1年以内
数え方 「会社の時季指定」「本人の請求・取得」「計画年休」のどれで取ったものも合計できる。合計が5日に達したら、会社が時季を指定する必要はなく、指定することもできない
半日 半日単位で取った分は、1回につき0.5日として数えられる
時間単位 時間単位の年休は5日に数えられない。会社の時季指定の対象にもならない
会社独自の特別休暇 法定の年休とは別に設けた特別休暇を取った日数は、5日から引けない

出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」、2026年10月19日確認

基準日に10日以上を付与し、半年後に5日未満の人へ時季を指定し、基準日から1年以内に5日取得させる流れを3つに分けた図

年10日以上になるのはいつか

通常の働き方の人(フルタイムなど)は、入社から6か月続けて働き、その間の全労働日の8割以上出勤すると、10日の年休が付与されます。そのあと勤続1年ごとに日数が増えます(労働基準法39条、2026年10月19日確認)。

勤続年数 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

パートなど所定労働日数が少ない人には、日数に応じた付与(比例付与)になります。その年に付与される法定の日数が10日以上なら、その人も対象です。前の年から繰り越した日数を足して10日以上になっても、対象にはなりません(上の厚生労働省の解説、Q&A)。

つまり、入社から半年で10日がつく人は、その日が最初の基準日です。そこから1年以内に5日取らせることになります。

罰則:30万円以下の罰金

年5日を取らせなかった場合は、労働基準法120条により30万円以下の罰金の対象になります(e-Gov法令検索「労働基準法」120条、2026年10月19日確認)。罰則は、対象の人1人につき1罪として扱われます。

ほかに次の場合も罰則の対象です(厚生労働省の解説、2026年10月19日確認)。

違反の内容 罰則
会社が時季を指定するのに、就業規則に書いていない(労働基準法89条) 30万円以下の罰金
本人が請求した時季に年休を与えなかった(労働基準法39条。7項を除く) 6か月以下の拘禁刑(解説の表記は「懲役」)または30万円以下の罰金

厚生労働省の解説では、労働基準監督署の指導は、原則として是正に向けて丁寧に行うとされています。ただし、時季を指定しただけでは足りず、実際に基準日から1年以内に5日取っていなければ法違反として扱われます。また、会社が時季を指定したのに本人が従わず、自分の判断で出勤して会社がその労働を受け取った場合も、年休を取ったことにならず、法違反を問われます。

会社が先にやっておくこと

  • 就業規則に、時季指定の対象者と方法を書く(規定例は厚生労働省の解説にあります)
  • 時季を指定するときは、本人の意見を聞き、できる限りその希望に沿うようにする(面談、取得計画表、メールなど、聞き方は決まっていません)
  • 年次有給休暇管理簿を作って保存する

建設業で止まりやすい4つのポイント

1. 日給制の人の有給の賃金

日給制の人も、年休を取れば賃金が支払われます。労働基準法39条9項では、年休の期間について次のどれかで支払うことを、就業規則などで決めておくとされています。

  • 平均賃金
  • 所定労働時間働いた場合に支払われる通常の賃金
  • 労使協定を結べば、健康保険の標準報酬日額(標準報酬月額の30分の1)に相当する額

出典:e-Gov法令検索「労働基準法」39条(2026年10月19日確認)

どれを選ぶかで金額が変わります。現在の就業規則に何と書いてあるかを確かめてください。また、年休を取った人に賃金の減額などの不利益な扱いをしてはいけません。精勤手当や賞与の計算で、年休の日を欠勤扱いにするのもその一つです(厚生労働省の解説)。個別の計算方法は、労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。

2. 付与日が人ごとにバラバラ

入社日が人によって違うと、基準日も人ごとに変わり、「誰がいつまでに5日取らなければならないか」の管理が大変になります。厚生労働省の解説では、基準日をそろえる方法が示されています。

方法 向く会社 内容
年始・年度始めにそろえる 人数が多い、新卒を一括で採用している 1月1日や4月1日を全員の基準日にする
月初にそろえる 中途採用が多い、小さな会社 月の途中で入社しても、その月の1日を基準日にする(4月10日入社と4月20日入社は同じ日に付与)

出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(2026年10月19日確認)

そろえるときは、付与日を法律より遅らせないよう前倒しの形にします。期限の1年が重なる期間は、その月数に応じて日数を按分できます(たとえば18か月なら、18÷12×5で7.5日)。この計算は労働基準法施行規則24条の5に基づきます。細かな運用は、厚生労働省の解説の図も確認してください。

3. 雨や工期で現場が動く

現場の休みは、天候や工程で動きます。そのため「年休の日を決めても、変更になるのでは」と心配になります。次の違いを押さえておくと整理しやすくなります。

会社が時季を指定 計画年休(計画的付与)
決め方 本人の意見を聞いて、会社が日を指定する 労使協定で、あらかじめ日を決める
必要な手続き 就業規則に書く 就業規則に書き、労使協定を結ぶ(労働基準監督署への届出は不要)
向く場面 取得が少ない人にだけ指定したい 閑散期に休みをそろえたい
注意 本人が5日取れば、指定はいらない 本人が自由に取れる年休を最低5日残す

出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(2026年10月19日確認)

計画年休は、使える日数が「付与日数から5日を引いた分」です。たとえば11日付与された人なら、計画年休の対象は6日までです。ただし計画年休で取った分も、年5日に数えられます。

雨で現場が止まった日は、会社の都合で休む日なのか、年休なのかで、扱いが変わります。休業の扱いには別の決まりがあるので、この記事では判断しません。迷う場合は労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。

4. 厚生労働省が紹介する建設業の事例

厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」には、建設業の取組事例が載っています。「休み方の改善(年次有給休暇の取得促進)」で建設業を選ぶと、2026年10月19日時点で49件が出ます。ここから、現場がある会社でも使える工夫を4つ、事例ページの記載で確認できたものだけ紹介します(従業員数・所在地は各ページの表示のまま)。

会社 工夫 出典
酒井工業株式会社(石川県、29名) 休日と祝日の間をブリッジ休暇(連休の間をつなぐ休み)として年休の申請を促し、上長が長期休暇を取るよう声をかける。ひとつの工事が終わって次の現場に配属されるまでの間に、まとまった休暇を取るよう促している 事例ページ
みづほ工業株式会社(石川県金沢市、35名) 計画的付与制度で、GWや夏季休暇にブリッジ休暇を取れるようにしている。10日間の連続休暇が可能になったとある 事例ページ
株式会社サカイエステック(福井県、63名) ゴールデンウィークやお盆の谷間を年次有給休暇取得推進日とし、1週間以上の連続休暇を取れるようにしている 事例ページ
株式会社風土(愛媛県、20名) 年休取得日数の目標を6日以上とし、月初の全体会議で声かけをする。勤怠管理システムで有給の残日数を見える化している 事例ページ

出典:上の各事例ページ(厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」、2026年10月19日確認)。一覧は取組・参考事例

どれも、特別な設備ではなく「工事の切れ目に休みを置く」「閑散期や連休の谷間に寄せる」「残日数を見える化する」といった、段取りの工夫です。

取得計画の作り方

支援の現場から 現場を止めにくい会社で年5日を取れるようにした工夫は、取得の計画づくりが中心でした。会社として取り決めをして進めました。

厚生労働省の解説でも、基準日に年次有給休暇取得計画表を作ることが勧められています。年度別、四半期別、月別など、期間を区切って個人ごとに取得予定を明らかにすると、職場の中で時季の調整がしやすくなります。

年5日を満たす3つの方法(本人の請求、会社の時季指定、計画年休)を合計して5日になれば完了する流れの図

建設会社の場合は、次の順で進めると無理がありません。

時期 やること ポイント
基準日 本人に取りたい時季を聞き、年間の取得予定を一人ずつ書き出す 半日単位の希望も聞く。半日は0.5日で数える
工程表ができたとき 工程表に合わせて、休みを置ける時期を決める 工事の切れ目、連休の谷間、閑散期を先に押さえる
毎月 取得した日数を管理簿に記入し、5日に届いていない人を確認する 現場の責任者にも共有する
基準日から半年たったころ 5日未満の人に、会社から時季を指定する 本人の意見を聞き、できる限り希望に沿う
基準日の1か月前 5日に届いていない人がいないか最終確認する 変更の希望が出たら、再度意見を聞く

時季を指定するときの目安は、厚生労働省の解説にあります。基準日から半年たった時点で、取得が5日未満の人に、会社から時季を指定する方法です。取得が著しく少ない人には、基準日に指定する方法も示されています。

年次有給休暇管理簿の作り方

会社は、年休を与えたら、時季・日数・基準日を労働者ごとに明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作って保存しなければなりません(労働基準法施行規則24条の7、e-Gov法令検索、2026年10月19日確認)。

  • 必ず書く項目:時季(取った日)、日数、基準日
  • 保存期間:年休を与えた期間中と、その期間が終わってから5年間。ただし、当分の間は3年とする経過措置があります(同規則附則71条)。厚生労働省の解説でも「3年間」と案内されています
  • 労働者名簿や賃金台帳に、これらを追加して一緒にまとめてもよい
  • システム上で管理してもよい。必要なときにいつでも出力できることが条件

以下は、この記事で独自に作ったひな形です(公的な様式ではありません)。会社に合わせて変えてください。名前や数字は記入例です。

氏名 基準日 付与日数 取得日(時季)・日数 取得日数の合計 年5日の確認
(例)A 2026年10月1日 10日 11月3日(1日)、12月26日(1日)、2月20日(0.5日)… 2.5日 3月に再確認
(例)B 2026年4月1日 11日 5月2日(1日)、8月14日・15日(計画年休、2日)、10月9日(1日)、1月5日(1日) 5日 達成

取得日を変えたときは、管理簿も直します。管理簿は、5日を取らせたことを確かめる記録にもなります。

紙・Excelで管理が回らなくなったら:スマレジ・タイムカード

人数が増えて、基準日がバラバラのままでは、紙やExcelの管理簿はすぐに限界が来ます。クラウドの勤怠管理サービスで休暇も管理する方法があります。ここでは例として、株式会社スマレジのタイムカードの休暇管理を紹介します。以下は、2026年10月19日に公式サイトで確認した内容です。

項目 公式サイトの案内
有給の付与 入社日から有給の付与日を自動で算出できる。手動での付与も可能
表示 付与日数・消化日数・残日数・失効日数を一覧で確認できる
申請・承認 オンラインで申請・承認でき、勤怠の記録やシフトに反映される
有給取得のアラート 取得日数が足りない人に警告メールを送る機能がある
管理台帳 ボタン操作で出力できると案内されている
使えるプラン 公式ページ間で記載が分かれている(下記)。30日間の無料試用または問い合わせで確認する

出典:スマレジ・タイムカード「休暇管理」、機能一覧、プランと料金(2026年10月19日確認)

料金は、10名までならスタンダードが無料、プレミアムが月額2,420円(税込)です。11名以上は人数に応じた料金になるため、公式の料金ページで確認してください。アカウントを作ってから30日間はすべての機能を無料で試せ、プレミアムに切り替えなければ自動でスタンダードになります(同上)。

なお、休暇管理が使えるプランは、公式ページ間で記載が分かれています。機能一覧のページでは「プレミアムプラン以上でご利用いただけます」とある一方、料金ページの機能表ではスタンダードを含む各プランの欄に休暇管理が並んでいます(2026年10月19日確認)。プラン別の対応は公式ページ間で記載が分かれるため、30日間の無料試用または問い合わせで確認してください。

導入前に、試用期間中に次の点を確かめておくと安心です。

  • 自社の基準日の決め方(月初にそろえる、前倒しで付与するなど)に、付与日の自動計算が合うか
  • 出力される管理台帳に、時季・日数・基準日がそろっているか
  • 5日未満の人が一覧で分かり、アラートの通知先を自分で決められるか

ツールを入れても、年5日を取らせる責任は会社にあります。アラートが出たあとに誰が時季を決めるのか、社内の決まりもあわせて作ってください。勤怠の打刻や時間外労働の管理については建設業の時間外労働の上限規制と勤怠管理で詳しく紹介しています。

まとめ

  • 年10日以上の年休がある人(パート・有期、管理職を含む)が対象。基準日から1年以内に5日を取らせる
  • 取らせる方法は、本人の請求・会社の時季指定・計画年休。合計で5日になればよい
  • 時季指定の前に本人の意見を聞き、就業規則に書いておく
  • 違反は、人ごとに30万円以下の罰金の対象。時季を指定しただけでは足りず、実際に取っていることが必要
  • 現場では「工事の切れ目」「連休の谷間」「閑散期」に休みを置く。基準日は月初などにそろえると管理しやすい
  • 年次有給休暇管理簿に、時季・日数・基準日を記録し、保存する
チェック やること
□ 年10日以上の年休がある人と、その基準日を一覧にした
□ 就業規則に、時季指定の対象者と方法を書いた
□ 基準日に、一人ずつの取得計画表を作った
□ 半年たった時点で、5日未満の人に時季を指定する流れを決めた
□ 年次有給休暇管理簿を作り、保存している(当分の間は3年)
□ 日給の人の年休の賃金の払い方を、就業規則で確認した

休みの取りやすさは、若手が定着するかどうかにも関わります。定着のための取り組みは若手職人が辞める5つの理由と、辞めない建設会社がやっていること、日給制の人の給与は給与計算の基本も参考にしてください。残業の上限と勤怠の記録は建設業の時間外労働の上限規制と勤怠管理、日給月給・日給制の職人への有給の出し方は日給月給・日給制の職人にも有給は出す?で説明しています。

制度の細かな運用は変わることがあります。個別の判断に迷ったときは、労働基準監督署や社会保険労務士に相談してください。厚生労働省の「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」には、規定例や労使協定の例もあります。