建設会社が日雇いの職人に手伝いを頼むとき|契約書の出し方と「日雇いでなくなる」境目
この記事の結論
- 日雇いでも、契約を結ぶときに労働条件を書面で渡す。厚労省の建設労働者用・日雇型の様式が使える
- 同じ人が1か月を超えて続くと、社会保険の除外や解雇予告の例外が外れる。雇用保険は別の数え方
- 源泉所得税は、日雇賃金なら丙欄。同じ勤務先から2か月を超えた分は対象外
- 一人親方か日雇いかは、契約書の名前ではなく働き方の実態で分かれる
公式情報の確認日:2026年10月31日
目次(10項目)
「繁忙期だけ日雇いの職人を呼ぶが、契約書は要るのか」「口約束で済ませてきた」「同じ人が毎週来ているが、日雇いのままでよいのか」。従業員が数人から数十人の建設会社では、日雇いの手伝いの扱いが曖昧になりがちです。
結論から言うと、押さえることは3つです。
- 日雇いでも、労働条件は書面で渡す。厚生労働省の「建設労働者用・日雇型」の様式が使える
- 同じ人を続けて雇うと、日雇いの扱いから外れる場面がある。社会保険(健康保険・厚生年金)と解雇予告は「1か月を超える」、雇用保険は「前の2か月の各月18日以上、または継続31日以上」、源泉所得税は「同じ勤務先から2か月を超える」が目安
- 一人親方と日雇いは別物。契約書の名前ではなく、働き方の実態で分かれる
この記事の法令・制度は、2026年10月31日に公式情報(e-Gov 法令検索、国税庁、厚生労働省)で確認したものです。個別の事情は、社会保険労務士(社労士)か労働基準監督署(労基署)に相談してください。
この記事で分かること
- 日雇いで起きやすいトラブルと防ぎ方
- 日雇いにも書面が要る理由と、様式の選び方
- 日雇い用に決めておく項目の記入例(金額は説明用の仮の数字)
- 続けて来てもらったとき、扱いが変わる境目
- 一人親方との違い、ケガをしたときの考え方
日雇いを使うときに起きやすい3つのトラブル
| トラブル | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 口約束で済ませる | 日当や集合時刻、雨の日の扱いで言った言わないになる | 毎回、日額・現場・時刻を書面にして渡す |
| ずるずる継続する | 「日雇い」のつもりが、同じ人が毎週来て、社会保険などの扱いが変わる | 継続する人を月1回見直す |
| ケガをしたときに揉める | 雇用か請負か分からず、労災の扱いが曖昧になる | 日雇いか一人親方かを、最初に決めて書面にする |
「日雇い」とは何か
法令では、社会保険や解雇予告の条文に「日々雇い入れられる者」という言葉が出てきます。1日ごとに契約を結んで働く人のことです。
次の人とは別です。
- 期間を決めて雇う人(2か月以内、4か月以内など)。期間の決め方で、社会保険などの扱いが違います
- 期間の定めのない社員(正社員など)
- 請負で仕事を受ける一人親方
「日雇い」という名前で呼んでいても、同じ人を毎日のように続けて呼べば、実態は日雇いでなくなります。この記事の後半で、その境目を説明します。
日雇いにも書面は必要か
必要です。労働基準法15条は、労働契約を結ぶときに、賃金や労働時間などの労働条件を明示しなければならないと定めています。そのうち大事な項目は書面で渡す決まりです(e-Gov 法令検索 労働基準法 第15条、2026年10月31日確認)。この条文は、日雇いを除外していません。
厚労省も、建設労働者用の日雇型の様式を用意しています。
- 厚生労働省 主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係)に、建設労働者用の「常用・有期雇用型」と「日雇型」があります(厚生労働省 主要様式ダウンロードコーナー、日雇型(PDF)、2026年10月31日確認)
- 2026年10月1日からは常用・有期雇用型が新様式になりましたが、日雇型は従前の様式を引き続き使えると案内されています
渡さなかったときは、30万円以下の罰金の対象です(労基法120条1号。e-Gov 法令検索 第120条、2026年10月31日確認)。
様式の書き方の詳細は、労働条件通知書・雇用契約書の書き方にまとめています。日雇いで押さえることは1つだけです。厚労省のQ&Aでは、日雇いの人には「変更の範囲」を明示する必要はなく、その日の就業場所と仕事の内容を明示すれば足りるとしています(厚労省 Q&A(PDF)、2026年10月26日確認)。その分、その日の場所と仕事を具体的に書きます。
日雇い用に決めておく項目
毎回ゼロから考えると手間なので、会社として基本形を決めておきます。金額と時刻は説明用の仮の例です。
| 項目 | 記入例 | 注意 |
|---|---|---|
| 日額 | 日給 15,000円(所定労働時間8時間) | 時間外・深夜の割増賃金率も書く |
| 支払日 | 作業日の翌月25日、または作業当日 | 賃金は通貨で、直接本人に、全額を払う(労基法24条1項) |
| 現場の場所 | ○○町の新築工事現場(住所まで) | 「現場」とだけ書かない |
| 仕事の内容 | 型枠の解体、資材の運搬 | その日の作業を具体的に |
| 集合時刻・終業時刻 | 7時30分集合、8時開始、17時終了 | 休憩の時間も書く |
| 雨天中止の扱い | 前日の17時までに会社が連絡して中止にする場合は、賃金なし | 事前に決めて書く |
支払い方法は、手渡しでも問題ありません。労基法24条1項は、賃金を「通貨で、直接労働者に、その全額を」払うよう定めています(e-Gov 法令検索 第24条、2026年10月31日確認)。現金の手渡しは「通貨で直接」に当たります。銀行振込にする場合は、本人の同意などの要件があります。
雨天中止の扱いは、会社の責任で休みにするのか、悪天候でやむを得ず中止なのかで変わる場合があります。休業手当(労基法26条)に関わるので、決めるときは社労士か労基署に確認してください。給与計算の全体は建設会社の給与計算の基本で説明しています。
同じ人が続けて来たら
日雇いは、続けて雇うと扱いが変わります。確認できた境目を表にします。
| 項目 | 日雇いの扱い | 扱いが変わる条件 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 健康保険 | 日々雇い入れられる者は、被保険者にならない(日雇特例被保険者になる場合を除く) | 1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合 | 健康保険法3条 |
| 厚生年金 | 日々雇い入れられる者は、被保険者にならない | 1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合 | 厚生年金保険法12条 |
| 解雇予告(30日前の予告など) | 日々雇い入れられる者には適用されない | 1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合 | 労基法21条 |
| 雇用保険 | 日雇労働者は、一般の被保険者とは別の扱い | 前の2か月の各月で18日以上、または継続して31日以上、同じ事業主に雇われると、日雇労働者の扱いから外れるとされる。条文の定義は大づかみなので、切り替わりの扱いはハローワークに確認する | 雇用保険法42条・43条 |
| 源泉所得税 | 日雇賃金は日額表の丙欄 | 同じ勤務先から継続して2か月を超えて給与が支払われると、2か月を超える部分は日雇賃金に含まれない | 国税庁 タックスアンサー No.2511 |
確認日はすべて2026年10月31日です。出典は記事末にまとめています。
ここで、見落としやすい点が3つあります。
- 「1か月」と「31日」は別の数え方です。社会保険と解雇予告は「1か月を超えて引き続き使用」、雇用保険は「前の2か月の各月18日以上」か「継続31日以上」です。両方を見ます
- 社会保険の適用除外には、日雇い以外の条件もあります。たとえば「2か月以内の期間を定めて使用され、その期間を超えて使用される見込みがない人」も、同じ条文で除外されます。ただしその期間を超えて使うことになれば被保険者です。社会保険の加入は、短時間で働く人の加入要件も別にあるため、判断が難しければ年金事務所か社労士に確認してください
- 健康保険には、日雇特例被保険者という別の仕組みがあります。条文に名前が出てくるだけの確認で、要件はこの記事では確認していません。該当しそうなときは、協会けんぽか年金事務所に確認してください
源泉所得税の丙欄の使い方と年末調整の扱いは、年末調整のやり方と2026年の変更点で説明しています。国税庁によると、パートやアルバイトでも、あらかじめ雇用契約の期間が2か月以内と決まっていれば、丙欄を使います。
月に一度、「この1か月で何日来たか」を人別に数える表を作ると、境目の見落としを防げます。日給制の人の有給休暇は、建設業の日給月給と有給休暇で説明しています。
一人親方・外注との違い
一人親方は、請負契約で仕事を受ける個人事業主であることが多く、その場合は雇用ではありません。ただし、契約書の名前だけでは決まりません。労働基準法9条は、労働者を「事業に使用される者で、賃金を支払われる者」と定めています(e-Gov 法令検索 第9条、2026年10月31日確認)。この条文のとおり、「使用される」実態があれば労働者です。
| 項目 | 日雇い | 短期の有期契約 | 一人親方(請負) |
|---|---|---|---|
| 契約の形 | 労働契約を1日ごとに結ぶ | 労働契約を期間を決めて結ぶ | 請負契約(仕事の完成に対して払う) |
| 書面 | 労働条件通知書(日雇型) | 労働条件通知書(有期型) | 請負契約書・注文書など |
| 払うお金 | 賃金(日額) | 賃金 | 請負代金 |
| 労災保険 | 会社の労災保険の対象 | 会社の労災保険の対象 | 対象外。特別加入の制度がある |
労働者性を判断する基準の詳細は、今回の調査では公式の資料を確認できていないため、この記事では示しません。「日当をもらって、会社の指示で毎日同じ現場に来る」ような場合は、労働者と判断される可能性があります。判断に迷うときは、労基署に確認してください。
現場でケガをしたとき
労災保険法3条1項は、労働者を使用する事業を適用事業とすると定めています(e-Gov 法令検索 労働者災害補償保険法 第3条、2026年10月31日確認)。条文には、雇用形態による区別はありません。日雇いでも、労働者として使用していれば、会社の労災保険の対象になると考えられます。個別の事故での扱いは、労基署に確認してください。
一人親方は、労働者ではないので、原則として会社の労災保険の対象外です。一人親方には、労災保険の特別加入の制度があります(厚生労働省 労災保険への特別加入、2026年10月31日確認)。加入の条件は、この記事では確認していません。
建設業退職金共済(建退共)の日雇いの人の扱いは、今回の調査で公式の資料を確認できていないため書きません。
まとめ
- 日雇いでも、契約を結ぶときに労働条件を書面で渡す
- 厚労省の建設労働者用・日雇型の様式が使える。その日の場所と仕事を具体的に書く
- 続けて雇うと、社会保険は1か月、雇用保険は18日・31日、源泉は2か月が境目になる
- 一人親方と日雇いは、契約書の名前ではなく実態で分かれる
次の一歩は、4つの手順です。
- 厚労省の建設労働者用の様式を2種類(常用・有期雇用型、日雇型)用意する
- 日額、支払日、現場の場所、集合時刻、雨天中止の扱いを決める
- 同じ人が続けて来ている場合は、月1回、来た日数を数えて見直す
- 一人親方に頼むときは、請負契約書を別に作る
よくある質問
口約束だけでもよいですか?
よくありません。労働契約を結ぶときの書面の交付は、労基法15条で求められています。条文は日雇いを除外していません。渡さないと30万円以下の罰金の対象です。
日雇いの人に社会保険は必要ですか?
日々雇い入れられる人は、1か月を超えて引き続き使用されるまでは、健康保険・厚生年金の被保険者になりません。1か月を超えて続けて雇うと、被保険者になります。雇用保険は、前の2か月の各月18日以上、または継続31日以上で扱いが変わります。判断が難しいときは、年金事務所かハローワークに確認してください。
日当を手渡しでもよいですか?
労基法24条1項は、賃金を通貨で、直接本人に、全額払うよう定めています。現金の手渡しは問題ありません。ただし、受け取った記録(受領書)を残しておくと、あとの言った言わないを防げます。銀行振込にするときは、本人の同意などの要件があります。
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