日給月給・日給制の職人にも有給は出す?建設会社の付与条件と賃金の計算例
この記事の結論
- 日給でも条件を満たせば有給は付く。月給と同じ日数
- 有給の日の賃金は、3つの方法から就業規則で決める
- 会社が休みにした日は有給ではなく、休業手当の話
- 日雇い・有期の人は継続勤務の実態で判断。迷えば労基署へ
公式情報の確認日:2026年10月29日
「日給月給の職人にも、有給を出さないといけないのか」「出すなら、日給を払うのか」「雨で現場が休みの日に、有給を使いたいと言われた」。建設会社の社長や総務の方から、よく出る疑問です。
結論は次の4つです。
- 日給月給制・日給制でも、要件を満たせば有給は付く。月給の人と同じ日数
- 有給の日は賃金を払う。払い方は3つあり、就業規則で決める
- 会社が休みにした日(雨・工程待ち)は、有給とは別の話(休業手当)
- 日雇い・短期・有期の人は、継続勤務の実態で変わる。迷ったら労働基準監督署へ
記事中の法令は、2026年10月29日に e-Gov 法令検索で条文を確認したものです。
この記事で分かること
- 有給が付く条件と日数(日給の人も同じ)
- 有給の日の賃金の3つの払い方と、日給1万2000円の人の計算例
- 雨や工程待ちで休む日との違い
- 日雇い・有期の人、一人親方についての考え方
- 就業規則に入れる文例
日給月給・日給制でも有給は付く
有給(年次有給休暇)は、労働基準法39条で決められた、労働者の権利です。給与が月給か日給かは関係ありません。
条文が決めている条件は2つです。
- 雇い入れた日から6か月間、続けて働いている
- その間の全労働日(働く約束の日)の8割以上、出勤している
この2つを満たすと、10日の有給が付きます。そのあと勤続1年ごとに日数が増えます(e-Gov法令検索「労働基準法」39条、2026年10月29日確認)。
| 勤続年数 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
この表は、通常の働き方の人(フルタイムなど)の日数です。週の所定労働日数・時間が少ない人は、日数に応じて付与される日数が少なくなります(比例付与)。具体的な日数は厚生労働省令で決まっているので、該当する人がいるときは、労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。
付与日数が年10日以上になった人には、年5日を取らせる義務もあります。基準日・管理簿・罰則は建設会社の有給5日取得義務で説明しています。
有給の日の賃金:日給の人はどう払うか
有給の日は、働かなくても賃金を払います。日給月給の人の場合、有給の日の分を月の給与から差し引きません。
労働基準法39条9項では、払い方を次のどれかから選び、就業規則などで決めておくとされています(2026年10月29日確認)。
| 方式 | 内容 | 条件 |
|---|---|---|
| 通常の賃金 | 所定労働時間働いた場合に支払われる通常の賃金 | 就業規則に書く |
| 平均賃金 | 直近3か月の賃金総額 ÷ その期間の総日数(労働基準法12条) | 就業規則に書く |
| 標準報酬月額の30分の1 | 健康保険の標準報酬月額の30分の1に相当する額 | 労使協定が必要 |
日給の人にとって、いちばん分かりやすいのは「通常の賃金」です。有給を取った日は、いつもの日給をそのまま払います。
計算例:日給1万2000円の人の1日分
次の数字は、説明のために置いた仮の例です。実際の金額は、自社の賃金台帳で計算してください。
- 日給:1万2000円
- 直近3か月の賃金総額:72万円
- 直近3か月の総日数:90日(暦の日数。休みの日も含める)
- 直近3か月に働いた日数:60日
- 標準報酬月額:24万円(仮)
| 方式 | 計算 | 1日分 |
|---|---|---|
| 通常の賃金 | 日給をそのまま | 1万2000円 |
| 平均賃金 | 72万円 ÷ 90日 = 8,000円 | 8,000円 |
| 標準報酬月額の30分の1 | 24万円 ÷ 30 | 8,000円 |
平均賃金には最低保障があります。日給のように「働いた日」で決まる賃金の場合、賃金総額を働いた日数で割った額の60%を下回ってはいけません(労働基準法12条1項1号)。この例では、72万円 ÷ 60日 × 0.6 = 7,200円で、8,000円のほうが高いので、平均賃金は8,000円です。
この例のように、日給をそのまま払う方式と、平均賃金・標準報酬月額の30分の1とでは、1日あたり4,000円の差が出ます。どれを選んでも違法ではありませんが、有給を取った人の収入が下がることになります。有給を取った人への賃金の減額などの不利益な取扱いをしないようにしなければならない、と案内されています(厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」、2026年10月19日確認)。
日給の人は、通常の賃金なら「いつもの日給」をそのまま払えばよく、計算の手間が小さくなります。給与計算の流れは給与計算の基本も参考にしてください。
雨や工程待ちで休みの日は、有給ではない
日給月給の会社で、特に悩みが集中するのがここです。
会社が休みにした日は、休業手当の話
雨や元請の工程の都合で、会社が「今日は休み」とした日は、有給とは別の扱いになります。労働基準法26条は、会社の責任による休業の場合、休業期間中、平均賃金の60%以上の手当を払うよう決めています(e-Gov法令検索「労働基準法」26条、2026年10月29日確認)。
ここで大切なのは、次の点です。
- 有給は、本人が請求する時季に与えるのが原則です(労働基準法39条5項)。会社が休みにした日を有給に振り替えてよいかは、この記事では判断しません
- 雨で休みになった日が「会社の責任による休業」にあたるかどうかは、事情で変わります。この記事では判断しません。労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください
本人が「雨の日に有給で」と希望したとき
整理すると、次のようになります。
| 場面 | 考え方 | 確認先 |
|---|---|---|
| 会社が前日までに休みと決めた日 | 休業手当の問題。有給を使うかどうかは、扱いは就業規則と労基署で確認 | 就業規則、労基署 |
| 朝になってから、現場が止まることが決まった日 | 会社の責任か、不可抗力かの判断が必要。基準は示せない | 労基署、社労士 |
| 本人が事前に有給を請求していた日 | 請求された時季に与えるのが原則。事業の正常な運営を妨げる場合に限り、会社は他の時季に変更できる | 就業規則 |
雨の日に有給を使わせてよいか、という問いについては、公式の資料で「この場合は使える・使えない」と決められた基準を、この記事では確認できていません。そのため、断定は避けます。考え方としては、会社が休みにした日なのか、本人が請求した日なのかを、まず分けて整理するのがおすすめです。
会社が時季を変更できる「時季変更権」は、本人が請求した時季に与えると事業の正常な運営を妨げる場合にだけ使えます。その場合も、他の時季に与えることになります(労働基準法39条5項、2026年10月29日確認)。使える場面は限られるため、使う前に労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。
月給制に切り替えると、雨の日の給与の扱いは別の形で整理できます。詳しくは日給月給制から月給制に変える手順を見てください。
日雇い・季節・有期契約の人
有給の条件は「雇い入れの日から6か月間継続勤務」と「全労働日の8割以上の出勤」です。39条の条件は、契約の形(正社員、パート、有期契約)で分けていません。厚生労働省の解説でも、年5日の義務の対象には、有期雇用の人も含まれると説明されています(2026年10月19日確認)。
そのため、次のような人は、条件を満たせば有給が付く可能性があります。
- 契約更新を繰り返しながら、実際は続けて働いている人
- 繁忙期の数か月だけ雇い、毎年戻ってくる季節の職人
一方、短い契約をその都度終わらせて、間を空けて雇うような場合に、継続勤務としてつなげて数えるかどうかは、働き方の実態で判断が分かれます。この記事では、その判断基準を公式の資料で確認できていません。個別の人については、労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。
一人親方は労働者かどうか
一人親方や外注の職人は、会社に雇われる労働者ではなく、請負などの形で仕事を受けている人です。ただし、契約の名前ではなく、実際の働き方で労働者かどうかが判断されます。この記事では、判断の基準は示しません。「契約は外注だが、現場の指示で毎日働いている」といった場合は、労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。
就業規則・労働条件通知書に入れる文言
支援の現場から 現場を止めにくい会社で年5日を取れるようにした工夫は、取得の計画づくりが中心でした。会社として取り決めをして進めました。
「雨の日はどうするか」「日給の人の賃金はいくらか」が決まっていないと、現場で迷いやすくなります。取得の計画と同じで、先に取り決めておくと、現場で迷いません。
次は、この記事で独自に作った文例です。公的な様式ではありません。会社の実態に合わせて直し、最終的には社会保険労務士などに確認してください。
(年次有給休暇の賃金)
第○条 年次有給休暇を取得した日の賃金は、所定労働時間労働した場合に
支払われる通常の賃金を支払う。日給の者は、日給の額とする。
2 月の給与から、年次有給休暇を取得した日の分を差し引かない。
(会社の都合による休業)
第○条 会社の都合で休業とした日は、前条の年次有給休暇の日としない。
その日の賃金は、労働基準法26条に基づく休業手当その他の定めによる。
労働条件通知書には、休暇の項目に「年次有給休暇は法定どおり、賃金の払い方は就業規則第○条による」と書いておく方法があります。通知書の書き方は労働条件通知書の書き方を確認してください。
通知書と雇用契約書を、日給制の書き方に合わせて作りたいときは、Excel のひな形もあります。日給から時間単価と割増賃金の単価を出すシートや、交付管理表が入っています。厚生労働省の様式そのものではなく、独自のひな形です。
※ 運営会社の商品です。
まとめ
- 日給月給・日給制でも、6か月継続勤務と8割以上の出勤で、有給は付く
- 日数は月給の人と同じ(通常の働き方の人は10日から、最大20日)
- 有給の日の賃金は、通常の賃金・平均賃金・標準報酬月額の30分の1から就業規則で決める。日給の人には通常の賃金が分かりやすい
- 会社が休みにした日は、有給ではなく休業手当の話。迷う日は労基署へ
- 日雇い・有期・一人親方は、契約の形でなく実態で判断が分かれる。自己判断しない
| チェック | やること |
|---|---|
| □ | 日給の人も、付与日数の対象者に入れて一覧にした |
| □ | 有給の日の賃金の払い方を、就業規則で確認した |
| □ | 有給の日の分を、月の給与から差し引いていない |
| □ | 雨・工程待ちで会社が休みにした日の扱いを、先に決めた |
| □ | 日雇い・有期の人の扱いに迷う場合の相談先を決めた |
よくある質問
日給の職人にも、有給の日数は月給の人と同じですか?
通常の働き方の人は同じです。週の所定労働日数・時間が少ない人は、日数に応じた付与になります。
有給を取った日の賃金は、必ず日給と同じ額ですか?
必ずではありません。通常の賃金、平均賃金、標準報酬月額の30分の1のどれかを就業規則で決めます。標準報酬月額の30分の1にするには労使協定が必要です。
会社の判断で、雨の日を有給にしてよいですか?
有給は、本人が請求する時季に与えるのが原則です。会社の判断で休みにした日は、休業手当の問題になります。事情によって変わるので、迷ったときは労働基準監督署に確認してください。
一人親方にも有給を出しますか?
契約の名前でなく、実際の働き方で労働者かどうかが決まります。判断に迷う場合は、労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。
制度の細かな運用は変わることがあります。個別の判断に迷ったときは、労働基準監督署や社会保険労務士に相談してください。